中国の詩「二月の春風」
二月中旬、まだまだ寒いです。
今回は二月にまつわる中国の唐時代の詩をご紹介します。
『咏柳 』
唐 · 贺知章
碧玉妆成一树高,万条垂下绿丝绦。
不知细叶谁裁出,二月春风似剪刀。
Bì yù zhuāng chéng yì shù gāo,wàn tiáo chuí xià lǜ sī tāo.
Bù zhī xì yè shéi cái chū,èr yuè chūn fēng sì jiǎndāo.
訳文
『柳を詠む』
唐 · 賀知章
翡翠色の若葉が柳の木を丸ごと飾りつけた、
細枝が何万本の緑リボンのように垂れ下がる。
新緑の若葉を切り出したのはだれだろうか。
それはハサミに似ている二月の春風だろう。
単語の解説
碧玉:翡翠色の玉。ここでは春の若葉を比喩します。
妆:飾る、装飾する。
一树:木の全体。一:全部、全体。ここの数詞は一定の数量を示すのではないでの要注意。次の「万」も同じように、具体的な数量ではなくて、おびただしい量という意味の誇張表現。
绦(tāo):シルクでできた紐状の織物。ここは柳の枝をたとえています。
裁:裁つ、切りそろえる、裁断する。
似:…のように。似ている。
概説
「柳を詠む」は、唐代の詩人、賀知章が書いた七言絶句です。
これは、物や事を題材にして詠まれた詠物詩です。
二月の新柳の柔らかで細やかな若葉が春風に吹かれている様子を表現し、早春の生命力の強さとその到来を喜ぶ詩人の気持ちを余すところなく詠いあげています。
二月の春風を「ハサミ」にたとえ、「切り出す」という擬人化された動作で表すという独自の発想で、目に見えない春風を実感のある生き生きとしたイメージに変えています。
独創的なだけでなく、第一句と第二句と第四句で、aoという韻を踏んでいます。
「二月の春風」ですが、この二月は旧暦の二月のことで、実際には二月の下旬から四月上旬ごろに当たります。
まとめ
古詩は難しいというイメージがありますが、わかりやすいのもたくさんあります。
上記のように詩の中の二月は旧暦の二月で今よりもまだもう少し先のことですが、今日まだこの寒い中に柳の若い葉が風に吹かれてたなびいているという情景を、季節を先取りして想像しながら、春の訪れを待つのも風流ですね。
でもまあ、二月の春風を「ハサミ」にたとえるとは、すごい発想です。
そうすると二月の春風は柳の葉を切るだけでなく、「切り絵」や「散髪」の達人だったりして!?